東京大学における研究紹介 CEE季刊誌 Newsletter 掲載内容より

中野・杉山・種村研究室

中野義昭教授、杉山正和准教授、種村拓夫講師
先端科学技術研究センター / 工学系研究科総合研究機構

太陽光発電の研究

次世代太陽電池の開発


東京大学先端科学技術研究センターは、2008年7月、政府の クールアースエネルギー革新技術計画に基づく超高効率・低コス ト型太陽電池の研究開発プロジェクト「革新的太陽光発電技術計 画」の中核拠点に、産業技術総合研究所とともに選ばれた。同プ ロジェクトの共通目標は、2050年に光電変換効率を現在の2-3倍 の40%超に、発電コストを火力発電所に近い7円/kWhに下げる ことである。中野教授は、東大拠点の拠点長を務めており、プロジェ クトには前述の岡田研究室、後述の瀬川研究室が参画するほか、 シャープや豊田工業大学、新日本石油など8つの組織が参画して、 産学連携の共同研究開発が2014年度までの7年間にわたり行わ れる。この中で中野・杉山・種村研究室が直接携わるのは、高効 率量子タンデム太陽電池製造プロセス技術開発である。
図1モジュールでの変換効率40%超を達成するためには、1.2 eV 〜 1.0 eVまで吸収端を長波化したミドルセルを用い、多接合タン デム構造を実現することが必要である。このためのアプローチとし て、Ge上に積層可能なミドルセルの構造を検討するとともに、セル の量産に適した有機金属気相エピタキシー(MOVPE)による成 長技術を高度化させている(図1)。


高歪みのナローギャップ結晶層をGe基板上に成長する技術と して、歪み補償量子構造を利用したミドルセルの開発を行ってい る。具体的には、半導体レーザ等のMOVPEで実績のあるP含 有混晶を用いたInGaAs量子井戸/ GaAsPバリア構造の成長、 および窒素添加系を井戸に用いたInGaNAs量子井戸/ GaAs バリア構造のMOVPE成長の研究である。
これらの複合的なアプローチにより電流マッチングを改善させた 3または4接合の集光型多接合タンデム太陽電池を開発し、集光 時で45%以上の変換効率を目指している。
さらに、集光時の効率を向上させるため、多接合セルに微細 構造を活用して全波長域に対応する反射防止構造を形成すると ともに、小面積セルを単一基板上に集積直列接続し、高集光下 でも直列抵抗の寄与を減じた高効率の集積化セルの研究開発を 行っている。図2またマイクロ集光システムとハイブリッド集積させたマ イクロセルアレイ(図2)の開発にも着手している。

CEE Newsletter No.3(2009.1) 掲載内容