東京大学における研究紹介 CEE季刊誌 Newsletter 掲載内容より

和田(一)・石川研究室

和田一実教授、石川靖彦講師
工学系研究科 マテリアル工学専攻

太陽光発電の研究

太陽電池の効率向上・生産技術改良に関する研究

シリコンを用いた次世代太陽電池の高効率化ならびに薄層化 の研究を進めている。
1. 高効率化
高効率化をめざし、シリコン基板上のIII-V族半導体積層によ るタンデム化を研究している。現在、バルク結晶シリコン太陽電池 の効率は24.5%で留まっている。一方、高効率化に有効なタンデ ム化はGaAs系に格子整合するゲルマニウムを基板として30%を 超えるような太陽電池の研究が進んでいる。当研究室では、新し く開発したシリコン上に欠陥のないゲルマニウム薄膜の成長技術 をGaAs系のタンデム化へ適用し、AlGaAs/GaAs/Ge/Si/Geの 四層タンデムセルの研究を進めている。これまでにシリコン上のゲ ルマニウム太陽電池を試作し、理論効率を達成した。コンセント レータの併用などにより、効率の理論限界93%を目指す。

2. 薄層化
40cm以上の大口径基板が生産性よく得られるシリコンはすで に太陽電池の価格低減に適した材料である。しかし、低価格を ねらって外部で進められている研磨による太陽電池の薄層化は 層厚下限が100μm程度にあり、さらに研磨による材料損が避け られない。当研究室では、研磨の不要な、水素注入により10μm の薄層結晶シリコンの剥離を用い、それを太陽電池に適用する 研究を進めている。薄層化による効率低減を抑制するため、フォ トニックナノ構造の導入に関する研究を進めている。1.2〜1.3μm のバンド端近傍の波長を持つ光を効率的に吸収する構造を実現 し、効率30%を目指す。
CEE Newsletter No.3(2009.1) 掲載内容