東京大学における研究紹介 CEE季刊誌 Newsletter 掲載内容より

加藤信介研究室

加藤信介教授、樋山恭助助教、高橋岳生技術専門員
生産技術研究所 革新的シミュレーション研究センター

建築・土木とエネルギー・環境に関する研究

加藤(信)研究室では、地球環境,都市・街区・建築周辺・壁 近傍等の屋外環境から、大空間・人体周辺等の室内環境までの 種々のスケールを対象にした、数値シミュレーション・風洞実験・実 測等による風・気流・空気質等の空気環境に関する研究を展開し ている。また、近年の低炭素社会へのパラダイムシフトに貢献する ことを念頭に、暖房時における消費エネルギーをゼロにする「暖房 エネルギーゼロ住宅」の技術開発にも、近年力を注いでいる。本研 究室の研究テーマ例を以下に示す。

研究テーマ:断熱改修、ダイナミックインシュレーションによる 暖房エネルギーゼロ住宅の実現

図1 図2 LCCO2が少なく環境負荷の低い国産木繊維断熱材を用いて壁 面からの熱損失を低減するほか、ダイナミックインシュレーション技術 を取り入れたサッシュの採用により開口部からの熱損失を低減させ る。本研究により開発される住宅仕様(熱損失係数)は、現在の省 エネ住宅の指針となる次世代省エネ基準に定められている値の半 分程度を目標としている。また、太陽熱の長期蓄熱技術を併用し 暖房エネルギーを確保することで、「暖房エネルギーゼロ住宅」の 実現を目指している。


研究テーマ: 室内環境形成寄与率CRIの時間応答モデル開発と エネルギーシミュレーションへの適用

本研究では、室内の対流熱輸送現象をCFD(計算流体力学) により時間応答として算出し、ネットワーク解析による建物全体のエ ネルギーシミュレーションに組み込む手法の開発を行っている。この 手法が実現することで、室内の温度分布の不均一性を考慮した 熱負荷計算が可能となり、建築物のエネルギーシミュレーションが飛 躍的に高度化する。これは、不均一性を生かして快適と省エネル ギー双方の達成を目指す室内環境設計を定量的に評価するほか、 この両者のトレードオフ関係が発生する多目的最適化問題におい て合理的な意志決定ツールとして利用できることより、省エネルギー ビルを実現するための基盤技術となることが期待されている。

研究テーマ: 自然換気併用オフィスにおける可搬型 パーソナル空調機の研究開発

省エネルギーと快適性を両立させ、かつ既存の建物制御システ ムにも容易に採用可能な安価で可搬型のパーソナル空調機を開発 している。特に居室内の限られたタスク領域をなるべく均一温熱環 境となるよう制御し、タスク域の人体が大きな熱的不均一環境場に 曝されないようにするタスク域ワイドカバー型パーソナル空調を提案 している。写真1図3 写真1はワイドカバー型パーソナル空調使用時の可視化 写真を示しており、図3はCFDによる空気齢分布解析の結果であ り、タスク域温熱環境の均一性を確認している。

CEE Newsletter No.7(2010.4) 掲載内容