東京大学における研究紹介 CEE季刊誌 Newsletter 掲載内容より

池内研究室

池内克史教授
生産技術研究所 先進モビリティ研究センター

交通関連の研究

池内研究室では主にコンピュータビジョン(CV)やコンピュータグ ラフィクス(CG)、仮想現実感(VR)、三次元計測などの要素技術 を開発するとともに、これを活用してモビリティにまつわる新しいア プリケーションの創出や様々な問題の解決などに取り組んでいる。

(1)高現実ドライビングシミュレータ、運転視覚特性

図1 車載カメラで撮影した実写映像を用いて、非常に現実感の高い ドライビングシミュレータ運転映像を簡便に構築する技術を開発して いる。一度の走行で得た映像を「継ぎ接ぎ」処理することで路上の 自由視点から見たシーンを仮想的に合成できるのが特長である。 描画手法の違いによる視覚的違和感の評価のほか、デザイン事 務所との共同研究により視覚・心理に着目した道路シークエンスデ ザインの開発・検証も行っている(首都高速道路において実用化)。


(2)都市空間・道路構造モデリング、センシング車両開発

図2 カメラやレーザ計測機などを用いて屋外の大規模な空間の三次 元形状や色彩を正しく効率よく獲得する技術を開発している。具 体的には、車載カメラ映像と航空測量地図の照合による自車位置 推定と建物テクスチャリング、全方位映像を用いたピクセル精度で の自己位置推定およびシーン形状推定、時空間フィルタリングによ る車載カメラ映像からの電線・樹木・歩行者などの自動分離、路 上駐車車両・走行車両などの自動認識と分類、建物表面等の陰 影除去と真色・反射率の推定、大規模幾何データの位置合わせ と統合などである。


(3)拡張現実感技術とスマートツーリズム

図3 拡張現実感(AR)とは、専用のゴーグル等を使って現実の光景 の一部にCGを重ね合わせる技術で、消失した遺跡の跡地に往 時の姿を蘇らせたり、案内情報などを提示することが可能である。 これを利用した景観シミュレーションや、次世代モビリティを組み合 わせた観光情報・移動支援サービス(スマートツーリズム)の実用 化を進めている。奈良県明日香村や平城遷都1300年祭では体験 デモを行った。(企業化済み)


(4)その他

大規模な文化遺産のデジタルアーカイブや、人間の行動を観 察学習して伝統舞踊を踊ったり、絵画を描くロボットなどを開発し ている。
CEE Newsletter No.8(2010.10) 掲載内容