東京大学における研究紹介 CEE季刊誌 Newsletter 掲載内容より

桑原研究室・田中伸治研究室

桑原雅夫教授(兼任)・田中伸治講師
生産技術研究所 先進モビリティ研究センター

交通関連の研究

桑原研究室・田中(伸)研究室では、道路交通における渋滞・ 環境などの諸問題の解決や、より高度な道路交通の実現のため に、基礎的な理論から観測データに基づく純粋な交通工学的分 析、シミュレーションを用いたケーススタディ分析など、交通工学を いろいろな角度から様々な手法で研究している。 円滑かつ環境にやさしい持続可能な交通システムを実現するため、様々な交通現 象を理解し、また交通・都市計画の施策評価ツールを開発するこ とが当研究室の目標である。

(1)各種施策の評価ツールの開発

交通渋滞は遅れが時間的に累積する動的な現象であるので、 的確な分析のためにはそれを忠実に再現できるツールが必要であ る。当研究室では10年以上にわたり交通シミュレーションモデルの 開発を行っており、広域シミュレーションのSOUND、街路シミュレ ーションのAVENUEという代表的な2種類のモデルは、実用化さ れて実務にも活用されている。そのほか、シミュレーションモデルの 検証手続きの標準化や、シミュレーション適用に際しての留意事項 の整理など、モデル自体だけでなく、その周辺技術についても先 導的に検討している。図1最近は、交通シミュレーションモデルとCO2、 NOxなどの排出モデル、道路騒音モデル、あるいはドライビングシ ミュレータとの統合化も行っており、各種交通施策や交通行動の評 価へと適用範囲が広がりつつある。


(2)交通マネジメントに関する研究

交通の流れを円滑・安全に保ち持続可能な都市環境の実現に 資するために、既存の交通インフラを状況や制約に応じてうまく活 用する交通マネジメント手法に関する研究を行っている。例えば信 号制御の高度化として、切り替わり時の損失時間の評価や最近の センシング技術を活用したアルゴリズムの提案などを行っている。ま た路上駐車の適切な管理のため、単なる規制の強化ではない新 たな駐車スペースの提案やその実現可能性の評価なども実施し ている。一方需要側のマネジメントとして、利用者の協力により交 通需要を時間的に分散させるプログラムを提案し、アンケート調査 等を通じてその効果を推計している。

(3)ITS(高度道路交通システム)に関する研究

近年の情報通信技術の進展により、交通システムを高度化す るITSの可能性・必要性はますます高くなっている。当研究室は 先進モビリティ研究センター(ITSセンター)の一員として、主に交 通管理の側面からITSの研究を行っている。前述した信号制御 の高度化やETCデータの活用はその代表的なものだが、近年で は走行車両をセンサーとして交通状況を取得するプローブ情報を 活用する研究も積極的に行っている。さらに将来実現が見込まれ る施策として、可変チャンネリゼーションなどの動的な交通運用の 実現可能性の検討も行っている。
CEE Newsletter No.8(2010.10) 掲載内容