東京大学における研究紹介 CEE季刊誌 Newsletter 掲載内容より

牧野研究室

牧野浩志准教授
生産技術研究所 先進モビリティ研究センター

交通関連の研究

数十万年前に誕生したといわれる人類は地球上を移動し続け、 現在では宇宙にまで向かっている。移動手段も徒歩や馬から産業 革命以降、大型船、鉄道、自動車、航空機など急激に進化し、そ れらは生活、経済、都市、さらには国という形までも変えてきた。移 動はまさに社会の下部構造なのである。特に自動車という大発明 は様々なメリットを社会にもたらしたが、一方で交通事故、渋滞、 環境という問題ももたらした。近年では地球規模の環境問題という 制約も加わり、移動とエネルギーといった複雑な課題となっている。 情報革命によって生み出された情報通信技術を活用することで飛躍的なモビリティの変革をもたらそうというのがITS(Intelligent Transport Systems)である。牧野研究室では、ITSによってモ ビリティがどのように進化していくのか、生活や環境をどのように変 革していくのかを中心課題に据え研究活動を行っている。

(1)路車協調システムに関する研究

日本のITSは、VICSやETCに代表されるように情報通信技術 により道路と車が協調する路車協調システムを中心に発展してき た。研究室では日本で開発された5.8GHzのDSRC(Dedicated Short Range Communication)を活用した路車協調による社会 問題解決に関する研究を行っている。特に、電気自動車の普及と 観光の振興にITSを活用する研究では、長崎エビッツプロジェクト に参画し、社会へ貢献する研究を進めている。

(2)スマートグロースITSに関する研究

スマートグロース(賢い成長)ITSとは、都市の交通問題と人間 の生活との関係を明らかにし、“環境にやさしく”かつ“にぎわいの ある”都心の成長を目指すものである。ITSモデル実証実験都市 の一つである柏市をケーススタディーとして、都市と交通の関係の 整理、プローブ情報を活用したITS基盤情報システムの構築、駐 車場ITSに関する研究を行っている。

(3)世界の交通・都市・環境問題解決のためのITSの活用に関する研究

新興国では日本の高度成長期と同じ渋滞、事故、環境問題といっ た交通に起因する課題に苦しんでおり、経済発展と地球規模での環 境問題解決を両立させるためのITS導入が期待されている。「ITS の国際展開に関する特別研究会」を主宰し、日本のITSの技術移転 が可能となるようシステムアーキテクチャの整理や世界の都市・交 通問題を解決するITSの導入方法について研究を進めている。

CEE Newsletter No.8(2010.10) 掲載内容