東京大学における研究紹介 CEE季刊誌 Newsletter 掲載内容より

藤田・ドドビバ研究室

藤田豊久教授、ドドビバジョルジ准教授
工学系研究科システム創成学専攻

資源関連の研究

省エネルギー型環境技術とシステム化

図1 環境を考慮した資源・人工物の省エネルギー型循環技術の 適用とシステム化について研究しており、概念を図1に示す。 ベースメタル、レアメタル鉱物資源の枯渇と低品位化に伴い、 環境を考慮した水の浄化を含めた省エネルギー型の鉱物分離 精製、浸出回収を進めている。最近、蛍石中の砒素をビーズミ ルによるナノ粉砕と浸出を組み合わせppmオーダーにする高純 度化に成功した。鉱物は陸上のみならず、海底資源のコバルト リッチクラストなどからの選鉱、浸出、金属回収も試みた。同時 に、枯渇しつつある資源はリサイクルからも供給しなければなら ない。製品を製造する過程で排出される廃棄物の(1次)リサイ クルは比較的行われているが、市中に出た製品の(2次)リサイ クルはわずかである。製品中のレアメタル資源は高純度素材と して少量ずつ使用されているのでリサイクルには多量収集と保 管が必要であり各研究者が法も含めて検討している。 リユース、 カスケードリサイクルなど製造段階からリサイクルを考慮した設 計がかなり以前から提唱されてきたがまだ少なく、今後とも期待 したい。当研究室ではリユース促進のためのICタグの利用を検 討した。

図2 また、使用済み廃棄物から省エネ型破砕として図2の ような水中爆砕を機械破砕と組み合わせて、硬い金属の剥離と 分解、大量の金属とプラスチックの剥離、2次電池のような危険 物の破砕、情報の完全消去を可能とした。分解後の選別技術 として、研究室では数o以上の粒子の分離に適したソータ、磁 性流体を用いた比重分離、渦電流選別、帯電選別を開発して いる。

微粒子混合物(マイクロからナノ粒子を含む)分離につい ては浮選(マイクロバブル浮選)、超伝導高勾配磁選、高勾配 誘電選別、液液分離で高精度の分離を可能とし、図3図3にμm オーダーの希土類粒子の液液分離の例を示す。一方、廃棄物 中のわずかなレアメタルを浸出後、数ppmの液から回収する場 合は、安価な吸着材として藻類、植物を探しバイオソープション の吸脱着利用を研究している。数百ppmに濃縮されたレアメタ ルは晶析法や溶媒抽出法で回収し、湿式製錬法が適用できる。 また、基板の場合は、金属を酸化させない炭化法と機械破砕 で剥離分解する方法、粉砕した硝子中のITOの回収には塩化 揮発法でInやSnが分離回収でき、希薄なレアメタルが粉体中 にある場合は乾式製錬法も適することを示した。以上のリサイク ル技術やシステムの比較にはマテリアルバランスと環境評価を用 いて、CO2や排ガス、排水削減を研究している。さらに、人口 分布や運搬を考慮したリサイクル施設の設置場所、インセンティ ブの調査、重み付けなど、技術と組み合わせたトータルな省エ ネルギー型の資源リサイクルシステムを研究している。

CEE Newsletter No.9(2011.3) 掲載内容