東京大学における研究紹介 CEE季刊誌 Newsletter 掲載内容より

増田研究室

増田昌敬准教授、長縄成実助教
工学系研究科エネルギー・資源フロンティアセンター

資源関連の研究

社会の安定持続な発展のためには、経済成長を支えるエネ ルギー資源の量の確保と質の向上が重要課題である。当研究 室では、現在シーズとして存在する様々な流体資源開発・地 殻掘削のフロンティア技術を実用化レベルまで上げることでエ ネルギー資源問題の解決を目指している。

(1)メタンハイドレートの開発

日本周辺海域の海底地層に存在するメタンハイドレート (MH)は次世代の国産エネルギー資源として期待されている。東海沖〜熊野灘の海域だけでも約1.1 兆m3のメタン原始資源 量(国内ガス消費量の約12 年分に相当する量)が確認されて いるが、在来型天然ガス資源と異なりMHは地層内に固体とし て存在するので、その生産技術はまだ確立していない。MH 資源開発研究コンソーシアム(経済産業省)のプロジェクトリー ダーとして、MH 資源開発の早期実現を目指す研究に取り 組んでいる。(独)産業技術総合研究所との共同研究で MH 層からのガス生産挙動を予測する貯留層シミュレータ (MH21-HYDRES: MH21 Hydrate Reservoir Simulator) を開発し、図1減圧法・熱回収法等のガス生産手法の設計、MH 開発の経済性評価を行っている。さらにMH 層にCO2を混合 ガスやエマルジョンの形で注入しCO2をハイドレートとしてMH に固定しながらメタンを置換回収するという高回収率で環境に 調和したメタン生産プロセスの研究を進めている。


(2)先端掘削技術開発

写真1坑井掘削技術は石油・天然ガス開発のみならず、地熱資 源やメタンハイドレートなどの多様な地下資源開発、統合深海 掘削計画(IODP)に代表される学術調査、CO2や高レベル放 射性廃棄物の地中貯留などの環境・防災の分野においても重 要な役割を担っている。今なお十分に解明の進んでいない地 球の内部を理解し、地殻深部を開発・利用することを目指して、 一万メートルを超える大深度・大偏距の坑井を安全かつ効率 的に掘削するための最先端の掘削技術の開発に取り組んで いる。 とくに重点的に行っている のが大偏距掘削における掘屑 の運搬(カッティングストランスポ ート)に関する研究で、実用的 なシミュレータの開発および坑壁 不安定や坑井内の圧力管理な どの関連する問題への応用に ついて研究している。

CEE Newsletter No.9(2011.3) 掲載内容