東京大学における研究紹介 CEE季刊誌 Newsletter 掲載内容より

松島研究室

松島潤准教授
工学系研究科エネルギー・資源フロンティアセンター

資源関連の研究

当研究室は、(1)メタンハイドレートや地熱資源といった未来型 国産資源の物理探査技術開発に関する研究、(2)エネルギー収 支分析、の2本立てで研究に取り組んでいる。地球の有限性に 起因したエネルギー供給の不確実性の中で、従来の延長で単 に特定の技術分野を深掘りするばかりでなく、関連技術を俯瞰 し、社会科学的アプローチも包含させながら、エネルギー・資源 論的視点から未来社会を見通すことを使命と考えている。

(1)メタンハイドレートの資源探査

未来型の資源として期待されるメタンハイドレート(以下MH) は、現在国内外において、その資源化に向けた研究が積極的 に進められている。とりわけ少資源の我が国にとっては、将来の 国産資源としての可能性が大きく期待されている。当研究室で は、MH層の弾性波減衰特性に着目することにより、MH層の 資源量評価に資する情報(MH飽和率など)を推定する方法論 を現象理解(観測データ解析)・室内実験・理論構築の一連の 検討により包括的に確立することを目指している。また、減衰特 性以外の物理特性との融合による評価手法についても検討し、 さらにMH集積メカニズム等の地質モデルを加味することによる MH層に関する統合的な評価法を提示することも目指す。

(2)エネルギー収支分析

図1図2人類は、木材、石炭、石油とより良質なエネルギー源へと変 遷させながら高度な文明を築きあげてきが、これらのエネルギー は人工的に作られるものではなく、すべて自然界から享受して いる。重要なことは、エネルギーを享受するにはエネルギーが必要ということである。エネルギー享受の困難さを数学的に表現 するための一つの方法として、エネルギー収支比(EPR: Energy Profit Ratio)がある。図2に石油回収におけるEPR の概念を示す。図2において、地下に存在する石油を抽出する 過程においてエネルギーが投入され、エネルギーが回収されま す。EPRは回収エネルギーを投入エネルギーで割り算すること により得られ、その比が1以上にならないとエネルギー的に無駄 をしていることになる。EPRは、単に各種エネルギーを横並びに 比較するための指標だけに留まらず、将来の社会事情を予測 することのできる側面を有しており、「エネルギーと社会の科学」 の視点での研究も進めている。

CEE Newsletter No.9(2011.3) 掲載内容