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縄田研究室縄田和満教授工学系研究科技術経営戦略学専攻
資源関連の研究レアアースの安定供給問題について
2010年9月以後の中国の事実上の輸出禁止措置により、連
日、レアアース問題が大きく取り上げられているが、当研究室で
はここ数年中国の輸出政策の分析等、レアアースの安定供給
問題についての研究を行ってきた。図1の通り、レアアースは、
ランタノイド15元素にスカンジウムとイットリウムを加えた17元素
の総称であり、その用途は多岐にわたり我が国産業にとって必
要不可欠なものとなっている。例えば,ネオジムを使った強力な
ネオジム磁石は、ハイブリッド車、電気自動車、省エネ家電等
に幅広く使用されている。また、ジスプロシウムネオジム磁石の
耐熱性を高めるために必要不可欠なものとなっている。二酸化
炭素削減等の環境対策のためにはこれらは必要不可欠であ
り、今後もその使用量は増大していくものと予想され、その安
定確保の重要性が増していくと考えられる。レアアースは資源
の偏在性が高い。経済産業省(2009)「レアメタル戦略」によれ
ば、2008年における鉱石産出量をみると、中国が97%、インド
が3%、ブラジルが1%となっており、ほぼ中国の独占状況となっ
ている。我が国も、2007年時点で希土類輸入量の約90%を中
国からの輸入に依存している。このため、その安定供給に対
する中国の政策の影響は非常に大きい。2010年9月以前にも、
中国はレアアースに対して増値税還付率の引き下げ、撤廃・還
付率の引き下げ、輸出税の導入・税率の引き上げ、輸出数量
制限を順次実施しており、明確な輸出抑制政策をとっている。
当研究室では、これまで、中国の輸出抑制策やそのレアアー ス価格に与える影響について分析を行なってきた。さらに、 WTO(World Trade Organization、世界貿易機構)におけ る中国の輸出抑制政策に関する問題についての分析を行って いる。GATT/WTOでは輸入規制の制限・撤廃を主目的とし ており、これまで、輸出規制に関してはあまり問題とされてこな かったが、中国の輸出抑制政策に関しては、WTO協定に整 合的でない可能性がある。過去数年間にわたり、WTOの市 場アクセス委員会や物品理事会などにおいて、日米欧を中心と した国々が、レアアースを含む各種鉱物資源を対象とした中国 の輸出抑制策に関する懸念の表明を行うとともに、WTO協定 上の実施根拠の確認を中国に対して求めてきている。2009年 に、中国が亜鉛、スズ、レアメタル等の原材料の輸出を制限し ているとして、米国等によりWTOに提訴が行われ、現在係争 中であるが、これらの問題、さらにレアアースに関する輸出規 制の問題に対しても研究を行っている。 CEE Newsletter No.9(2011.3) 掲載内容
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