東京大学における研究紹介 CEE季刊誌 Newsletter 掲載内容より

佐藤研究室

佐藤光三教授、川口秀夫特任助教、小林肇特任助教
工学系研究科エネルギー・資源フロンティアセンター
寄附講座フロンティアエネルギー開発工学
社会連携講座持続型炭素循環システム工学

資源関連の研究

(1)持続型炭素循環システムの構築

化石燃料起源のCO2が自然の炭素循環を大きく乱している。環境共生の観点からは「CO2を産生源である地圏に封じ、従前の形態である炭化水素に変換する」ことが自然調和的行為であり、変換された炭化水素をエネルギー源として再利用することはエネルギー枯渇問題へ一つの解を与える。即ち、炭素循環に持続性を持たせることにより、環境とエネルギーに相補的なシステムを構築することが可能となる。そのために、微生 物を用いた二酸化炭素のメタン変換ならびに効率的採集技術の開発などを研究している。


(2)統合型流体シミュレーション技術の開発

流体問題は多種多様であり、一つの解法があらゆる問題に適しているわけではない。対象のスケール、形状、性状を把握した上で、問題毎に適した数値解法を選択することが重要であり、流体挙動を多側面から攻究することも大切になる。このような観点から、有限差分法、複素変数境界要素法、境界要素法、格子ボルツマン法、CIP法などを統合的に利用したシミュレーション技術を開発し、流体挙動の解明に取り組んでいる。

(3)フロンティアエネルギーの環境調和型開発

次世代のエネルギー供給源として期待されるフロンティアエネルギー資源に関する先端研究を推進し、その環境調和型開発の早期実現を目指している。低環境負荷の視点から地下微生物の利用に着目し、エネルギー資源の原位置改質技術や回収増進技術の開発、流動モデルと生化学反応モデルを組み合わせたシミュレーション技術などを研究している。

(4)不確実性の工学的処理と情報の価値の定量評価手法の開発

流体エネルギー資源の開発や二酸化炭素の地中貯留においては、貯留層の物性把握が重要であるが、対象が広範かつ遠隔であることから、その不均質性を正確に把握することは事実上不可能である。不確実性を低減するために様々な探査手法が適用されるが、そこで得られる情報の価値を定量的に評価する手法は存在しない。 そこで先ず、不確実性の工学処理としての確率論的アプローチを例にとって、情報を定量的価値基準によって取捨する方法論の検討に着手し、当該技術の確立と工学への実効的展開を目指している。
CEE Newsletter No.9(2011.3) 掲載内容