東京大学における研究紹介 CEE季刊誌 Newsletter 掲載内容より

島田研究室

島田荘平准教授
新領域創成科学研究科環境システム学専攻

資源関連の研究

島田研究室では、CO2地中貯留に関する実験とシミュレータ の開発、環境影響・経済性評価などの研究を行っている。地中 貯留の対象となる地層は、石油層、ガス層、石炭層、帯水層 などがあるが、研究室の主な研究対象層は石炭層である。また、 最近は石炭層と帯水層からなる夾炭層も対象にしている。

(1)実験研究

CO2の石炭層への固定メカニズムは主として吸着である。各 種石炭へのCO2吸着量を大気圧から超臨界圧力の範囲で測 定している。また、CH4が吸着されている石炭へCO2を圧入す る、置換実験も行っている。これらの一連の実験を通して、分 子径の小さいCO2は石炭と吸着以外のメカニズム、すなわち「溶 解」によって固定されるのではないかという見解を立てている。 「溶解」の概念を導入すると実験結果をうまく説明できる。また、 夾炭層中の炭質頁岩のCO2吸着量測定も行っている。

(2)シミュレータの開発

CO2地中貯留を実際に行うとなると大規模な設備が必要とな り、経費も膨大になる。地中貯留時のCO2の地中での挙動を予 測するには、シミュレータを使用するのが、簡便であり経済的で もある。研究室ではECOMERS-UTというECBMR(CBM増進 回収、Enhanced Coalbed Methane Recovery)シミュレータ を開発している。また最近、夾炭層を対象にしたシミュレータも 開発している。これは、炭層と帯水層へのCO2貯留を計算でき るので、複数の炭層を対象として、CO2注入層やCBM生産層 を変化させて夾炭層全体でのCO2流動を計算できる。

(3)環境影響・経済性評価

図1 上記シミュレータを使用して、地中貯留層上部へのCO2の漏 洩可能性、水平坑井によるECBMRの経済性、低品位炭層で の経済的操業条件などを評価している。また、GIS情報と組み 合わせて、CO2地中貯留のソース・シンク・マッチング評価も行っ ている。

CEE Newsletter No.9(2011.3) 掲載内容