東京大学における研究紹介 CEE季刊誌 Newsletter 掲載内容より

藤岡研究室

藤岡洋教授、太田実雄助教、井上茂特任助教
生産技術研究所

太陽光発電の研究

次世代太陽電池の開発


藤岡研究室では窒化物半導体InGaNを用いた超高効率太陽 電池の製造プロセスの開発を行っています。青色発光ダイオード 用材料として有名なInGaN混晶を用いた太陽電池は太陽光スペ クトルとのマッチングが良く50%を超える高い変換効率の実現が期 待されています。しかしながらInGaNには、容易にInNとGaNに 分離してしまう性質があり、これまで高性能な太陽電池は作製さ れたことがありませんでした。この相分離反応を抑制するために、 我々はPXD(パルス励起堆積)法とよばれる新しい結晶成長手法 を開発しています。このPXD法を用いると、従来の結晶成長手 法に比べ大幅に成長温度を低減することが可能になるため、分 離反応が起こらず均一で高品質なInGaN結晶が得られます。 PXD法は大面積の基板を短時間で処理するのに適した手法で あるため、安価で高効率な太陽電池が実現できると考えていま す。図1にPXD法で成長した窒化物半導体薄膜の透過型電子 顕微鏡写真を示します。原子が規則正しく並び高品質な結晶が 実現していることが分かります。

また、窒化物半導体薄膜は容易に基板から剥離できるため、 任意の材料の上に転写することができます。図2に実際にポリマー に転写した窒化物半導体単結晶薄膜の写真を示します。この技 術によってポリマーやガラスといったこれまで構造材料としてしか 使われてこなかった物質に高効率の発電機能を付与できるように なります。
図1、図2
CEE Newsletter No.3(2009.1) 掲載内容