東京大学における研究紹介 CEE季刊誌 Newsletter 掲載内容より

橋本研究室

橋本和仁教授、渡邉一哉特任准教授
工学系応用化学専攻 / 東京大学先端科学技術研究センター

太陽光発電の研究

次世代太陽電池の開発

(1)有機薄膜太陽電池の開発
有機薄膜太陽電池は、現在広く用いられているシリコン型の太 陽電池に比べ、作製コストが安価で軽量である、大面積化が可 能である、基板を選ぶことで柔軟性のあるセルを作成できる、と いった利点がある。そのため、ウェアラブルバッテリーや、カラフル ウィンドウなどへの応用が考えられ、身近なエネルギー源としての 応用が期待されている。その一方で、変換効率が低い(単結晶 シリコン:20%、有機薄膜:5%)、セルの寿命が短い(数時間〜数 日程度)といった問題があり、研究が待たれている分野である。 橋本研究室ではナノ構造を用いた有機薄膜太陽電池の高効率 化に関する研究を行っている。
  • ● 液晶分子を利用したナノ構造の構築
  • ● 新規フラーレン誘導体によるバッファ層の構築とその応用
  • ● 無機ナノ構造の構築と光電変換素子への応用
  • ● 有機薄膜太陽電池への応用に向けた導電性高分子の設計と合成
  • ● ブロックコポリマーの自己組織化によるナノスケール相分離構造
  • ● 架橋反応によるポリマー太陽電池の安定化
(2)生物太陽電池の開発
生物太陽電池とは、光合成生物による光エネルギー/電気エ ネルギー変換反応を利用した太陽電池である。例えば、光合成 微生物であるシアノバクテリアを負極触媒とした電気化学セルを 作成すると、光照射に応答した電流生成が観察される。生物を 使うことの利点は自己再生能・自己増殖能(与えられたエネルギー の一部を利用して、触媒活性を自主的に維持・増強する能力)に あり、真にサステイナブルなエネルギープロセスの構築に繋がると 期待される。一方、現在のエネルギー変換効率は低く(〜 0.1%)、 生物学的・化学的研究課題が非常に多く残されている。橋本研 では、様々な生物やシステムを用いた生物太陽電池の研究開発 を行っている。
  • ● モデルシアノバクテリアの光・電気エネルギー変換システムの分子生物学的解析
  • ● 自然微生物群集を用いた生物太陽電池の構築
  • ● 高活性光・電気エネルギー変換微生物のスクリーニング
  • ● 植物・微生物共生系を利用した光・電気エネルギー変換
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CEE Newsletter No.3(2009.1) 掲載内容