東京大学における研究紹介 CEE季刊誌 Newsletter 掲載内容より

岡田研究室

岡田至崇准教授
先端科学技術研究センター

太陽光発電の研究

次世代太陽電池の開発


岡田研究室では、従来にない新しい半導体薄膜材料や、半 導体量子ドットなどの量子ナノ構造を導入して太陽電池の変換効 率を画期的に高めるための研究を行い、代替エネルギー技術の イノベーション創成を目指している。具体的には以下に関する研 究を進めている。

(1) 多接合タンデム太陽電池の高効率化と新しい化合物半導体材料と薄膜単結晶成長技術
吸収帯の異なる太陽電池を多層化することで、幅広い太陽光 スペクトルを吸収し、変換効率を高めることが可能となる。化合物 半導体を用いた多接合タンデム太陽電池における現在の主流は 3接合セルであるが、4接合化することで理論上50%以上の変換 効率が達成できる。岡田研究室では、4接合セルの実現に必要と なる、Ge基板と格子整合しつつ1 eV付近のバンドギャップもつ材 料として、1.2%程度のNを含有したGaInNAs薄膜材料の開発 を行っている。これまでに分子線エピタキシー法を用いて1.07 eV のバンドギャップをもつGaInNAsの作製に成功している。現在、 MBE成長中のSbサーファクタントの利用による結晶の高品質化 などに取り組んでいる。
図1

(2) 自己組織化成長法を用いた3次元量子ナノ構造・超格子の作製技術、
    及び量子ナノ構造マルチバンド太陽電池の基礎物性の解析と制御
量子ナノ構造マルチバンド太陽電池は、理論変換効率60%以 上の高効率化が可能と考えられており、その実現に向けては,高 密度で3次元的に全体配列した量子ドット超格子を作製すること が必須である。量子ドットとは、電子や正孔をド・ブロイ波長程度 (数nm 〜 20 nm)の領域に3次元的に閉じ込める微細構造であ り、量子ドット中の電子や正孔はその領域に閉じこめられて状態 密度が離散化される。またそれらを周期的に並べた構造を量子ド ット超格子と呼び、量子ドットの間隔を調整することで物性の大幅 な制御が可能となる。当研究室では、高密度でサイズ均一性、 配列性ともに優れた、高指数面基板上InGaAs系自己組織化量 子ドット群に着目し、さらに歪み補償成長を利用した量子ドットの多 層積層化を行うことで、3次元的に完全配列化された量子ドット超 格子の開発を行っている。また、量子ドット超格子を用いたマルチ バンド太陽電池の基礎特性に関して研究を進めている。図2(上)開発中 のマルチバンド太陽電池は、p-i-n構造のi層中に、量子ドット超格 子を導入した構造をもつ。導入された量子ドット超格子が、母体と なる半導体の禁制帯中に複数のミニバンドを形成することによっ て、幅広い帯域で太陽光 スペクトルを吸収し、太陽 光を効率よく電力に変換 することが可能となる。
図2(下)

CEE Newsletter No.3(2009.1) 掲載内容