東京大学における研究紹介 CEE季刊誌 Newsletter 掲載内容より

笠木研究室 ・ 鹿園研究室

笠木伸英教授 ・ 鹿園直毅准教授
工学系研究科 機械工学専攻

燃料電池の開発

固体酸化物形燃料電池の開発

工学系研究科笠木研究室および鹿園研究室では、将来のエネ ルギー問題の解決に欠かせない固体酸化物形燃料電池(Solid Oxide Fuel Cell、以下SOFC)に関する研究を行っている。
(1)小型固体酸化物形燃料電池システムの開発
固体酸化物形燃料電池は燃料電池の中でも発電効率が高く、 多様な燃料が使用可能であることや排熱利用も含めたシステム効 率が高い等の利点を有する。また、小型化に伴う性能低下が小 さいため、分散・モバイル用途への適用も想定されている。一方、 SOFCは高温で作動するため、自身の発熱で高温を維持(熱自 立)することや、性能のバラつきや熱応力を抑制するための熱設 計技術が課題となる。本研究では、自作の小型燃料極支持 SOFCを用い、その過電圧特性を多孔質内のイオン導電と三相界 面での電荷移動を考慮してモデル化している。さらに、これを数 Wクラスの超小型熱自立システム設計に適用することで、実験及 びシミュレーションの両面 から小型熱自立システム の熱設計技術の高度化 に取り組んでいる。
図1

(2)SOFC電極の3次元微細構造と分極特性の定量化
SOFC電極の分極特性および長期信頼性は、その微細構造、 すなわち反応ガス、電子、イオンの導電パスの屈曲度や、電極反 応の場である三相界面(Three phase boundary、以下TPB)等 に大きく影響されることが知られている。SOFC劣化の主な原因の 一つとして、Niの凝集や酸化還元サイクル等による燃料極微細構 造の経時変化が挙げられる。図2SOFCのブレークスルーのためには、 このような微細構造変化と性能劣化の因果関係を定量化する必 要があるが、微細で複雑な三次元構造を高分解能かつ高精度に 組成判別することには大きな困難が伴うため、微細構造と分極特 性を定量的に対比した研究は限られている。本研究では、FIBSEM を用いてSOFC電極の3次元微細構造を復元し、さらに格 子ボルツマン法を用いた電荷移動と電気化学反応 を連立させた過電圧の数値シミュレーショ ンを行っている。このことで、従来 の経験と直感に基づく電 極設計から脱却 し、数値シミュ レーションをベ ースとした電極 設計が可能と なる。

CEE Newsletter No.4(2009.4) 掲載内容