東京大学における研究紹介 CEE季刊誌 Newsletter 掲載内容より

山田研究室

山田淳夫教授
工学系研究科 化学システム工学専攻

二次電池・キャパシタの開発

リチウムイオン電池

エネルギーを貯蔵し、必要に応じて取り出す機能は、いかなる 電力システムにおいても重要な役割を演じている。その機能を提 供する2次電池の性能向上には目覚ましいものがあり、現在では 内燃機関を大幅に上回る出力密度も提供可能である。このため、 低炭素社会に向けたキーデバイスとして注目が集まっている。

このような技術の進歩を、我々は携帯電話やノートパソコンとい った携帯電子機器において、毎日の生活の中で大いに享受して いるが、これは希少金属の浪費や発火爆発事故のリスクといった、 継続が許容されない前提の上に成り立っている。これらの問題を 解決し、次世代自動車、風力発電や太陽光発電といった、持続 可能社会実現に向けた重要大型技術に適用していくことは、環境 問題に直面した人類の宿命ともいえる。しかし、コスト低減や安全 性確保のための技術的障壁は高く、問題解決のためには、システ ム・デバイスの中での材料の位置づけをきちんと行って上で、新た な機能性材料の適用と、その反応機構の正しい理解に基づく最 適化が不可欠である。

図1山田研究室では、基礎科学に則った原子・分子レベルでの精緻 な解析から、元素戦略、コストや安全性といった現実問題まで、様々 な階層の問題意識をベ ースに、多角的・総合的 に最適現実解を追求し ている。具体的には、リ チウムイオン電池をはじ めとするエネルギー貯蔵 変換デバイスに使用され る無機機能材料を対象 に、クラーク数上位元素 のみから構成される新規機能材料の開発、インターカレーション反 応における相変化の構造・熱力学的体系化、電極反応における素 過程解析、イオン拡散現象の実験的視覚化、実用化に向けた電 極構造最適化などを推進している。

図2
CEE Newsletter No.4(2009.4) 掲載内容