東京大学における研究紹介 CEE季刊誌 Newsletter 掲載内容より

花木・栗栖研究室

花木啓祐教授、栗栖聖講師、中谷隼助教
工学系研究科 都市工学専攻

エネルギー・環境問題のモデル分析

環境負荷を考える場合には、都市の場で生じる負荷だけでなく、都市が消費する様々な物質の製造や廃棄の際に生じる環境負荷も同時に考えなければならない。そのためには、ライフサイクル的な考え方が必要となり、また環境負荷を全体として減らすゼロエミッションを適用していく必要がある。
 また、環境改善施策の提案にあたっては、環境中に排出される汚染物質の動態把握や、その処理技術の開発といった工学的アプローチが重要となる一方、施策提案を受け入れる市民がどのような態度を形成し行動にまで移すのか、といった側面をも考慮することが重要であり、多面的な環境改善施策の評価が必要となってくる。複雑な現代の環境問題を読み解き、解決法を提示するためには、従来の型にはまらない新しい発想により、物事を包括的に捉える研究が必要とされる。
 花木・栗栖研究室では、温室効果ガスの排出をはじめとした環境負荷が小さく、同時に質の高い環境を保った環境共生型都市の構築を目指した研究を進めている。人間活動の様々な側面を取り上げ、工学的視点のみならず、社会学、経済学との融合を図り、持続可能な社会を形成していくための礎となる研究を進めており、研究テーマの概要は以下のようになる。

(1)温室効果ガスの削減

図1
  • ● 民生部門からのCO2削減施策の提案(図1参照)
  • ● 清掃工場からの廃熱利用
  • ● サステイナブルキャンパス

(2)バイオマスの有効利用

図2
  • ● 木質系バイオマスの有効利用
  • ● バイオエタノール・バイオディーゼル
  • ● 都市の未利用有機性廃棄物の有効利用戦略(図2参照)
  • ● 農業系廃棄物の有効利用戦略

(3)廃棄物マネージメント

  • ● LCAによる廃棄物管理の評価
  • ● 廃棄物削減行動に与える心理学的因子の抽

(4)社会経済学的アプローチ

  • ● LCAにおける統合化アプローチ
  • ● 環境配慮行動に与える心理学的因子の抽出など
  • ● 水辺の価値形成に与える因子の評価
  • ● コンジョイント分析による環境価値の貨幣算定

(5)都市の衛生・水管理

  • ● 地球温暖化シナリオに基づく水使用量の評価
  • ● 途上国における衛生管理システムの評価理
  • ● 新たな衛生システムの提案(バイオトイレ)

(6)生物学的処理技術

  • ● 硫黄脱窒による硝酸性窒素除去およびアルカリ土壌中和
  • ● バイオトイレにおける発熱に寄与する細菌特性の解析
  • ● 植物葉による大気中の多環芳香族炭化水素類の分解機構

(7)持続可能な社会に向けた企業・事業活動の評価

  • ● 企業活動評価へのEco-efficiencyの適用可能性
  • ● 持続可能な社会に向けた商業形態に関する考察
  • ● 産業エコロジーに関する研究
CEE Newsletter No.6(2010.1) 掲載内容