東京大学における研究紹介 CEE季刊誌 Newsletter 掲載内容より

岩船研究室

岩船由美子講師
生産技術研究所 エネルギー工学連携研究センター

エネルギー・環境問題のモデル分析

岩船研究室の基本的な目標は、環境負荷(エネルギー消費量・二酸化炭素排出量)を低減できるシステムを明らかにし、そしてその実現方法を探求することである。目標はシンプルではあるが、考慮しなければならない制約条件は、経済性、資源量、国際競争などの政治的な問題、システムの永続性、人間の嗜好、将来の不確実性、既存システムの硬直性、など多岐に渡る。これらを踏まえた上で適切に評価するためには、工学だけではなく、経済学等の社会科学分野との学際領域での研究が必要となる。本研究室の研究テーマ例を以下に示す。

(1)消費者が必要とするエネルギー効用に関する研究

エネルギーの充足水準というのは、存在するものか。効用(生活の質)を落とすことなく、消費者の要求に答えつつ、エネルギー消費を抑制していくことはどこまで可能なのか。また、どこまでの 効用劣化が受け入れられるのか。エネルギー消費のレベルと効用の関係について研究を行う。

(2)都市エネルギーシステムの統合的評価

民生部門、交通部門のエネルギーシステムを対象に、気象条件や産業構造の影響も考慮に入れた総合的な評価を行い、人が住みやすい街づくりと環境負荷が小さい街づくりは共存するのかについて検討を行う。地域、ビル、住宅レベルのエネルギー管理システムの活用、熱電併給型の都市エネルギーシステムなど自立分散情報技術を取り入れた新しいエネルギー管理システムの活用の可能性について検討する。

(3)アジアのエネルギー消費量の将来動向に関する研究

アジア農村部では、調理に家畜糞や農業廃棄物を直接燃焼するバイオマス燃料を使用している世帯が多く、使い勝手が悪いばかりでなく健康被害などの問題も指摘されている。生活水準の上昇に伴い、農村部でも今後LPGへの移行が進むことが一般的と考えられるが、その場合大幅な化石燃料の消費拡大が懸念される。調理用燃料はバイオマス燃料のガス化の実現可能性と効果について検討を行う。
図1
CEE Newsletter No.6(2010.1) 掲載内容